労働時間の適正な把握について

令和6年11月25日  発行

労働時間は毎日適正に把握し、それに基づいて賃金を計算し、支払うことが必要です。今月号では、この内容について解説します。

(1)労働時間とは

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、
労働時間に該当
します。

【労働時間に該当する例】

〇 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した
後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

〇 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している
時間(いわゆる「手待時間」)

〇 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

(2)労働時間の適正な把握

労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者には労働時間を適正に把握する責務があります。
使用者は、労働時間の適正な把握のために、以下の措置を講じる必要があります。

【労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置】

〇 始業・終業時刻の確認及び記録

使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

〇 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として下記①②のいずれかの方法によること。

① 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。

② タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

〇 自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

上記①②の方法によることなく、自己申告制により行わざるを得ない場合は、自己申告制の対象者となる労働者に対して、
労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行う等の措置を講ずる必要があること。

〇 賃金台帳の適正な調製

使用者は、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、 深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。

〇 労働時間の記録に関する書類の保存

使用者は、労働者名簿、賃金台帳のほか、出勤簿やタイムカード、残業命令書及びその報告書等の労働時間の記録に関する
書類についても、労働基準法第109条に基づき、当分の間3年間(原則5年間)保存しなければなりません。

(3)注意点

1日ごとに、一定時間に満たない労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わないことは、労働基準法違反となります。

【違反例】

〇 勤怠管理システムの端数処理機能を使って労働時間を切り捨てている

勤怠管理システムの端数処理機能を設定し、1日の時間外労働時間のうち15分に満たない時間を一律に切り捨て(丸め処理)、その分の残業代を支払っていない。

〇 一定時間以上でしか残業申請を認めない

残業申請は、30分単位で行うよう指示しており、30分に満たない時間外労働時間については、残業として申請することを認めておらず、
切り捨てた分の残業代を支払っていない。

〇 始業前の作業を労働時間と認めていない

毎朝、タイムカード打刻前に作業(制服への着替え、清掃、朝礼など)を義務付けているが、当該作業を、労働時間として取り扱っていない
(始業前の労働時間の切り捨て)。