トレーニング
給与計算講座:健康保険法・厚生年金保険法より
6-1.政府管掌健保と組合健保
健康保険事業の運営主体(保険者と呼びます)は、国(社会保険庁→都道府県保険課→社会保険事務所)と(「政管健保」と呼びます)、700人以上の被保険者を使用する事業所または3,000人以上の被保険者を有する同業種の事業所の集団が、厚生大臣に申請し認可されたとき設立する「健康保険組合」(「組合健保」と呼びます)があります。
「健康保険組合」は、政府の行う健康保険の代行機関で政管健保以上の保険給付や、保険料負担の軽減を行っています。たとえば、賞与から徴収される健康保険料(特別保険料)の被保険者負担がない組合が多くあります。また健康保険組合が、厚生年金基金の事業主体となっているケースがほとんどで被保険者は年金給付の場合も有利になっているようです。
6-2.健康保険の被扶養者の範囲
被扶養者の範囲は図のとおりですが、所得税法の扶養親族の範囲と異なる点にご注意ください。(所得税法の扶養親族とは配偶者を除き、6親等内の血族と3親等内の姻族をいいます)
6-3.標準報酬月額
被保険者の報酬は、一人ひとり違いますので、そのままの額で保険料を計算したり保険給付をするとしますと、事務が煩雑で困難です。そこで一定の枠を定めて、各被保険者の報酬(給与など)の月額をこの枠にあてはめて事務処理をしています。これを「標準報酬」または「標準報酬月額」といいます。
標準報酬の区分
標準報酬は、次の区分で定められています。
1.健康保険
第1級98,000円〜第39級980,000円
2.厚生年金保険
第1級98,000円〜第30級620,000円
決める時期と有効期間
1.資格取得決定
「被保険者資格取得届」により決められます。
1〜5月の決定は、その年の8月まで使用。
6〜12月の決定は、翌年の8月まで使用。
2.定時決定
毎年の7月の「報酬月額算定基礎届」により決められます。
9月〜翌年8月まで使用。
3.随時決定
報酬の大幅変動時「報酬月額変更届」により改定されます。
1月〜6月の決定は、その年の8月まで使用。
7月〜12月の決定は、翌年の8月まで使用。
6-4.標準報酬の対象となる報酬
健康保険・厚生年金保険でいう「報酬」とは、金銭・現物を問わず、被保険者が事業主から労務の代償として受けるすべてのものをいいます。ただし、通常、賞与は標準報酬の対象から除外されます。
1.金銭で支払われるもの
給料のほか、残業手当、家族手当、通勤手当など名称は何であっても労務の代償であれば報酬となります。
2.現物で支給されるもの
衣服・食事・住宅または自社製品というように報酬の一部が現物で支給される場合がありますが、これも報酬となります。衣服・食事・住宅については都道府県ごとに標準価額を定めていますので、それにより金銭に換算し、報酬に算入しますが、衣服は時価になっています。会社から給食や食券が支給されている場合は、標準価格によって金銭に換算しますが、その経費の一部を被保険者が負担している場合は、標準価額から本人負担分を差し引いた額が現物給与の額となります。ただし、食事については標準価額の3分の2以上を被保険者が負担している場合は、報酬に算入しません。
一般に、賞与など(賞与・決算手当等)は、標準報酬の対象にはならず、健康保険の特別保険料の対象になります。
〈年4回以上支給されれば標準報酬の対象になる〉
年に4回以上賞与等が支給される場合は、標準報酬の対象になりますので、報酬月額の計算には、賞与等の平均月額を算入します。標準報酬の対象になれば、健康保険の特別保険料の対象から除外されます。
6-5.算定基礎届
被保険者が実際に受ける報酬と標準報酬が大きくズレないように、毎年1回、全被保険者の報酬月額を届け出て、標準報酬を決め直しています。(定時決定)
算定基礎届を提出
毎年、7月1日〜10日までに全被保険者について「被保険者報酬月額算定基礎届」により、4月・5月・6月の報酬月額を届け出ることになっています。
報酬月額の算定
1.支払基礎日数19日以下の月を計算の対象から除く。
2.月々支払われるもののうち現物支給のものは標準価額などにより金銭に換算して、各月の報酬を計算する。
3.対象月(支払基礎日数20日以上)の報酬総額を計算し、その月数で割る。
〈5月または6月に入社した人〉
算定基礎届には報酬の支払基礎日数を記入しますが、支払基礎日数とは給料計算の対象となる日数をいいます。日給制の場合は、稼働(出勤)日数が支払基礎日数となりますが、月給制・日給月給制や週給制の場合は、給料計算の基礎が暦日で、日曜日や有給休暇も含まれるのが普通ですので、出勤日数に関係なく暦の日数が支払基礎日数となります。
ただし、欠勤日数だけ給料が差し引かれる場合は、その残りの日数が支払基礎日数となります。
〈20日未満の月は対象外〉
支払基礎日数が20日未満の月は通常月の報酬と大きくズレる場合があるため、報酬月額計算の対象から除きます。
〈育児休業で無給または休業給となったとき〉
1歳未満の子を養育する親(法律上の親子関係にある親)は、事業主に申し出ることによって育児休業を取ることができます。
育児休業中でも、報酬支払の有無にかかわらず使用関係が続いていれば、被保険者の資格は続きます。休業中に無給あるいは低額の休職給を受けている場合は、休業前の標準報酬月額がそのまま続きます。事業主は、被保険者負担分も合わせて保険料を納付する義務がありますので、休業中に被保険者負担分をどのような方法で控除(徴収)するか被保険者とあらかじめ取り決めをしておく必要があります。特に取り決めをしていない場合は、通常の方法で被保険者から(徴収)します。
6-7.差額支給には修正平均を
昇給差額が支給された場合は、差額分だけ高くなりますので、差額を差し引いて平均月額を計算します(修正平均)。この修正平均が報酬月額となります。次のような場合は、修正平均も出します。
<普通の方法で算定すると実体と離れ、不当な額となるとき、例えば>
1.4月・5月・6月のいずれかの月に3月以前の給料遅配分の支払を受けたとき、
また4月・5月・6月のいずれかの月の給料が遅配で7月以降に支払われるとき
2.昇給が遡ったため、4月・5月・6月のいずれかの月にその差額を受けたとき
3.4月・5月・6月のいずれか、またはすべての月に低額の休職給またはストライキによる賃金カットがあったとき
※ 4月・5月・6月の3ヶ月ともすべて支払基礎日数が20日未満であるとか、3ヵ月ともすべて低額の
休職給であるという場合は、従来の標準報酬月額をそのまま用いることに決まっています。
6-8.月額変更届
給料が大幅に変わったとき、昇給などによって被保険者の受ける報酬が大幅に変わったときは、次の定時決定を待たずに標準報酬が改定されます。これを随時改定といい、このとき提出する届書が「被保険者報酬月額変更届」です。
随時改定は、次の3つのすべてに該当している人について行なわれます。
1.昇(降)給などで固定的賃金に変動があったとき
2.変動月以後引き続き3ヵ月の平均月額(報酬月額)と従来の標準報酬との間に2等級以上の差が生じたとき
3.3ヵ月とも支払基礎日数20日以上あるとき
固定賃金の変動
支払額や支払率が決まっているものを固定賃金といい、その変動には次のケースが考えられます。
1.昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
2.給与体系の変更(日給から月給への変更など)
3.3ヵ月とも支払基礎日数20日以上あるとき
4.請負給、歩合給などの単価、歩合率の変更
5.家族手当、住宅手当、役付手当などの固定的な手当が新たについたり、支給額が変わったとき
固定的賃金
月給、週給、日給、役付手当、家族手当、住宅手当、勤務地手当、基礎単価、歩合率など
非固定的賃金
残業手当、能率手当、日・宿直手当、皆勤手当、精勤手当など
対象外
固定給が下がったのに残業手当等の非固定給が異常に増えたため2等級以上の差が生じたという場合、またはその逆の場合は、随時改定の対象となりません。
6-9.標準報酬の上限・下限の扱い
標準報酬には、上限・下限がありますので、大幅に報酬が変わっても2等級差ができない例がでてきます。たとえば、上限より1等級下の人は報酬がどんなに上がっても2等級差ができません。そこで、次の左欄に該当する人が、昇給または降給によって、固定的賃金の変動月以後引き続く3ヵ月の報酬月額が右欄の額に達したときは、随時改定が行われます。
従来の標準報酬月額 | 昇(降)給 | 報酬月額 | 改定標準報酬月額 |
38級(930,000円)の場合 | 昇給 | 1,005,000円以上 | 980,000円 |
【 29級(590,000円)の場合 】 | 【昇給】 | 【 635,000円以上 】 | 【 620,000円 】 |
1級(98,000円)で報酬月額が95,000円未満 | 昇給 | 101,000円以上 | 104,000円(または以上) |
39級(980,000円)で報酬月額が1,005,000円以上 | 降給 | 955,000円未満 | 930,000円(または以下) |
【 30級(620,000円)で報酬月額が635,000円以上 】 | 【降給】 | 【 605,000円未満 】 | 【 590,000円(または以下) 】 |
2級(104,000円)の場合 | 降給 | 95,000円未満 | 98,000円 |
※【 】内は厚生年金保険
6-10.差額支給には修正平均
昇給が遡って決められ、昇給差額が支給された場合は、差額が支給された月を固定賃金の変動月として、差額支給月とその後の2ヵ月の計3ヵ月で2等級以上の差が出たときに月額変更届を提出します。この場合、単純に3ヵ月平均を算出すると、差額分だけ高くなりますので、差額を除いて報酬月額(修正平均)を算定します。
6-12.保険料の徴収
従業員負担分の保険料は前月分を、当月分の給与から控除することになっています。つまり、4月分の保険料は5月に支給する給与から控除し、徴収するわけです。当月分や2ヵ月分以上の保険料を徴収することはできません。
保険料の計算は、月単位で計算します。入社したときは、月の途中でも1ヶ月分かかります。
反対に退職したときは、月の中途でもかかりません。ただし、入社した月に退職したときに限り、1ヶ月分かかることになります。具体的に、資格喪失の例をあげてみましょう。
1.5月31日退職=6月1日付被保険者の資格喪失届出=5月分保険料徴収
2.5月30日退職=5月31日付被保険者の資格喪失届出=5月分保険料不要
3.5月2日入社、5月25日退職(5月26日資格喪失)=5月分保険料徴収
1.の場合で、6月分の給与支払がない場合は、5月分給与より4月分、5月分の2ヵ月分の保険料を徴収します。
6-13.健康保険の被保険者の資格取得、喪失、転出入などの手続き
従業員を採用したときに必要な資格取得手続き適用事業所に採用されて入社すると被保険者になります。
しかし、被保険者の資格は確認してもらわなければ効力は生まれません。
被保険者の資格は、次の日から取得します。
1.適用事業所に入社したとき 入社の日
2.適用事業所となったとき なった日
3.適用除外の事由に該当しなくなったとき 適用除外でなくなった日
4.転勤したとき 転入の日
この被保険者資格の確認には、次の手続きが必要です。
何を | 被保険者資格取得届 |
いつまでに | 資格取得した日から5日以内 |
だれが | 事業主 |
どこへ | 事業所の管轄社会保険事務所 |
添付書類 | 1.被扶養者届 2.再就職者で厚生年金保険に加入していた人は年金手帳 3.年金を受けていた人は年金証書 |
被扶養者となる人とその手続き
採用した従業員に妻や子などの扶養家族があるときは、健康保険の家族給付が受けられます。
健康保険の被扶養者と認められるためには、被保険者となる人はあらかじめ、被扶養者があることを届け出なければなりません。また、出生や結婚などで被扶養者に異動があったときも、その旨を届け出ることが必要です。
1.入社したときにすでに被扶養者があるとき
2.入社後に新しく被扶養者ができたとき
3.被扶養者に異動があったとき
被扶養者(異動)届により手続きをします。
何を | 健康保険被扶養者(異動)届 |
いつまでに | 資格取得日か異動日から5日以内 |
だれが | 事業主 |
どこへ | 事業所の管轄社会保険事務所 |
添付書類 | 1.被扶養者届 2.再就職者で厚生年金保険に加入していた人は年金手帳 |
健康保険被保険者証の交付と届出
健康保険被保険者証の交付
被保険者資格取得届を社会保険事務所に提出すれば、被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書に添えて、健康保険被保険者証と年金手帳(交付を受けているものは除かれます)が交付されます。事業主は、これを受け取ったときは、ただちにその被保険者証年金手帳を被保険者に渡し、決定された標準報酬の額を本人に通知してください。健康保険被保険者証には、被保険者の欄と被扶養者の欄があり、被保険者とこの被保険者証に書かれている被扶養者については、この被保険者証で医師の診療を受けることができますから、医療に関しては現金、小切手と同じくらい大切なものです。
この健康保険被保険者証は、被保険者資格取得のときに交付を受け、被保険者の資格を喪失したときに返納することになっています。
なお、氏名が変わったり、被扶養者に異動があったときには、届出に添えて提出することになっています。
被保険者証をなくしたとき
健康保険被保険者証を紛失したとき、破れて使用できなくなったとき、医師の記入欄に余白がなくなったときなどは、次の届出をして、新しく交付を受けます。
何を | 健康保険被保険者証再交付申請書 |
いつまでに | すみやかに |
だれが | 事業主 |
どこへ | 事業所の管轄社会保険事務所 |
添付書類 | 無余白や破れた被保険者証 |
被保険者と被扶養者が遠く離れて住んでいるとき
被扶養者(本人の父母、祖父母、配偶者、子、孫、弟妹)が遠く離れて住んでいるため、1枚の被保険者証では困るときには、次の手続きをすればもう1枚もらうことができます。
何を | 健康保険遠隔地被保険者証交付申請書 |
いつまでに | 必要なとき |
だれが | 事業主 |
どこへ | 事業所の管轄社会保険事務所 |
添付書類 | 事業所の証明書、被保険者証、被扶養者の居住証明書 |
従業員が退職したときの資格喪失手続き
被保険者が退職したり死亡したときは、被保険者の資格を失います。この資格は、次の日の翌日に失います。ただし、5.については誕生日の前日が資格喪失日です。
1.退職した日
2.死亡した日
3.事業所が廃止になった日
4.任意適用事業所が脱退を認可された日
5.65歳となった日(厚生年金保険のみ)
被保険者が資格を失ったときは、事業主は健康保険被保険者証を回収し、次の手続きをしなければなりません。なお、年金手帳を会社で預かって保管しているときは本人に返すことを忘れないようにします。
何を | 被保険者資格喪失届 |
いつまでに | 資格喪失した日から5日以内 |
だれが | 事業主 |
どこへ | 事業所の管轄社会保険事務所 |
添付書類 | 被保険者証(なくしたときは被保険者証添付不能届) |
従業員が転勤したときの手続き
(1)転勤で転入、転出があったとき
同一企業内の事業所間で社員が転勤したときは、旧勤務事業所では「被保険者資格喪失届」を、転勤後の事業所からは「被保険者資格取得届」を提出します。
この場合、届書の資格喪失年月日と資格取得年月日を同日付にしなければなりません。日付が違った場合、被保険者が損失を受けることがありますから注意が必要です。
たとえば、4月30日付資格喪失、5月1日付資格取得の場合は、4月分は保険料はかからず、被保険者期間が1日あきます。したがって、この被保険者が転勤後1年以内に傷病のため被保険者の資格を喪失したときは、被保険者資格喪失後の保険給付が受けられません。厚生年金保険の場合は、4月は被保険者期間となりませんので、年金給付の計算で1ヶ月分の損をします。年金の場合は、一生損をするということにになるわけです。しかし、同一の適用事業所内の異動のときは、被保険者資格に関する手続きは必要ありません。
(2)関連会社へ出向したとき
出向の条件により、次のとおりとなります。
1.これまでの事業所での使用関係がなくなるときには、元の事業所では資格喪失届の提出が必要です。そして新たに使用関係が始まる新しい事業所では資格取得届を提出することになります。
2.使用関係を残したまま出向し、両方から報酬を受け取るときは二つの事業所で勤務することになりますので、所属選択・二以上事業所勤務届の提出が必要です。
(3)海外勤務になったとき
国内の事業所との使用関係が続くときは、被保険者資格はそのまま続きます。使用関係がなくなるときは、資格喪失届の提出が必要です。
従業員の氏名、生年月日などが変わったときの手続き
被保険者については、そのほか、次の届出・手続きが必要です。
どこへ | 何を | いつまでに | 添付書類 |
1.被保険者が2以上の事業所に勤務したとき | 同一管轄内は被保険者2以上事業所勤務届、違う管轄は被保険者所属選択届 | 事由が生じた日から10日以内 | |
2.被保険者の氏名が変わったとき、間違って届け出たとき | 被保険者氏名変更・訂正届 | すみやかに | 被保険者証年金手帳 |
3.被保険者の生年月日を訂正するとき | 被保険者生年月日訂正届 | すみやかに | 被保険者証年金手帳 |
4.資格取得年月日、喪失年月日の訂正、取消のとき | 被保険者資格記録事項訂正・取消届 | すみやかに | 被保険者証年金手帳 |
6-14.資格喪失した人が任意継続被保険者を希望するときの手続き
(1)資格取得手続き
2ヶ月以上継続して被保険者期間がある人が、被保険者の資格を喪失した場合、資格を喪失した日から20日以内に次の申請をすれば、「任意継続被保険者」となることができます。
20日をこえて提出した場合でも、正当な理由(天災地変、交通機関のスト等)があれば受け付けられます。
何を | 健康保険任意継続被保険者資格取得申請書 |
いつまでに | 資格喪失した日から20日以内 |
だれが | 本人 |
どこへ | 本人の住所地の管轄社会保険事務所 |
(2)被保険者期間
この被保険者の被保険者期間は2年間です。2年を経過すれば、自動的に資格を喪失することになります。だたし、55歳以上で被保険者の資格を喪失し、任意継続被保険者となった人は、60歳に達するまでの期間(国民健康保険の退職被保険者となるべきときは、それまでの期間)は、2年を経過しても任意継続被保険者となれます。この被保険者になる目的は、被保険者の資格を喪失した後、次の会社に勤務して被保険者となるまでの間のつなぎの役をするものです。
(3)保険料
健康保険任意継続被保険者の標準報酬月額は、原則として退職時の標準報酬月額によります。ただし、その人の属している各健康保険(政管健保、各健康保険組合)での標準報酬月額の平均額を最高額(限度額)としていますので、平均額をこえていた場合には平均額が標準報酬月額となります。
政府管掌健康保険の場合、平成17年4月以後も任意継続被保険者の標準報酬月額の最高額は従前の280,000円となっており、在職中の標準報酬月額が280,000円をこえていた場合でも、280,000円として計算します。
(4)資格喪失
任意継続被保険者は、次に掲げる事項に該当した場合に、被保険者の資格を喪失します。
1.2年を経過したとき(ただし、6.を除きます)
2.強制被保険者、任意包括被保険者となったとき
3.保険料の納期限(その月の10日)までに納付しなかったとき
4.死亡したとき
5.船員保険の被保険者となったとき
6.55歳以上で会社を退職して任意継続被保険者となった者が、60歳に達したとき
(任意継続被保険者でなかったとすれば、国民健康保険の退職被保険者となるべきとき)。
ただし、その期間が2年に満たないときは、2年を経過したとき
この任意継続被保険者の資格喪失年月日は、1.3.4.6.の場合は該当日の翌日、2.5.の場合は該当日となります。なお、この被保険者の場合は、被保険者資格喪失届を提出する必要はありません。
6-15.厚生年金の被保険者の加入、異動などに必要な事務手続き
健康保険と同一の用紙を使って届出
厚生年金保険の資格取得、資格喪失届等は、健康保険と同一の用紙に記入することになっており、すべて取扱いは同じです。したがって、「被保険者資格取得届」、「被保険者資格喪失届」、その他の届書については、「健康保険のあらまし」で説明したとおりに記入して提出すればよいわけです。ここでは、健康保険と同じものについて、届出書名のみあげておきましょう。
(1)被保険者資格取得届
(2)被保険者資格喪失届
(3)被保険者氏名変更訂正届
(4)被保険者生年月日訂正届
(5)被保険者資格記録事項訂正取消届
(6)被保険者所属選択・2以上事業所勤務届
(7)被保険者報酬月額変更届
(8)被保険者報酬月額算定基礎届
その他届出上の注意点
(1)種別の変更
種別の変更とは、第1種被保険者(男子)から第3種被保険者(坑内員、船員)になったり、逆に、第3種被保険者から第1種被保険者になった場合をいいます。
種別が違うことにより、保険料、保険給付の額が違ってきますので、必ず届け出てください。
(2)添付書類
届出様式は、ほとんどのものが健康保険のものと同一といいましたが、ただ「被保険者資格取得届」については、添付書類等について少し違いがありますので注意してください。
〔添付書類〕
1.厚生年金保険に加入したことがある人は、年金手帳(紛失して添えられないときは、年金手帳再交付申請書を添えること)
2.老齢厚生年金、老齢年金、通算老齢年金、特例老齢年金、船員保険の老齢年金等を受けている人は、それぞれの年金証書を添え、届書の備考欄に、「厚老年」「厚通老年」「船老年」等受けている年金名を記入します。
(3)記入上の注意事項
1.記入上の注意事項は、届書の裏面に詳しく書いてあります。
2.厚生年金保険被保険者台帳の記号・番号欄には、以前に厚生年金保険に加入していた人は、必ず書いてください。記号は4桁「4102」、番号は6桁「006250」等、上下に零があるときは、それも記入します。年金手帳を紛失して記号番号が不明のときは、空欄とし、再交付申請書を添付します。厚生年金保険被保険者の記号番号を同一人が二つも三つも持つことは、社会保険業務センターに保管されているコンピューターにそれぞれ別々に記録されていることになりますので、年金給付のときにたいへん遅れることになります。
3.資格取得年月日欄には、必ず「入社年月日」を書きます。なお適用除外者が、適用除外に該当しなくなったときは、適用除外に該当しなくなった日を書くことになります。